おもちゃについて(0歳・1歳・2歳)

子どもにとって、オモチャは「自分をとりまく世界に触れることの代替手段」です。

保育の仕事に携わるようになって、「危険なものや複雑なしくみを理解すること」と「発想すること」を、達成しやすいかたちでシンプルに提示してあげることがオモチャの本来の役割なのかな、と感じています。

でも、知育玩具をうたっている商品って高い物が多くて「・・・」ですよね。しかも、意外とこどもの食いつきが悪い(笑)。
そこで、オモチャ選びのポイントとして各発達段階でのこどもの育ちと、獲得して欲しい「ちから」を(知育玩具もこれに則ってつくられているはずです)、保育士時代の経験も交えてまとめてみました。

 

玩具が促す、3つの育ち

まず、0~3歳までの大まかなポイントを。

  1. 身体能力の発達   
  2. 因果関係の理解  
  3. 自我の育ち    

1については、具体的に言うと筋・神経・脳の繋がりを促します。2は「触ると揺れる」「振ると音が鳴る」など、「じぶんがした働き掛け」と「世界の反応」について感じとり、理解するということです。3ですが、「自我」とは簡単に言うと「自分の思うように生きたい」という気持ちです。

 

それでは行ってみましょう。

 

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0~6ヶ月

まだ随意運動が上手く出来ないごく初期には、おかあさんが「おもちゃ」です。

 

抱っこしたり、あやしたり、子守歌を歌ったりと、受動的に刺激を受けることによって感覚を覚えていきます。

 

モビールが揺れるのをみるのも楽しい頃です。しばらくして指が開くようになると、把握反射を利用して握ることができるようになります。これによって手触りや大きさ等様々な情報を刺激として感知し、脳に送ります。

 

赤ちゃんがよく毛布やシーツをニギニギしているのもこれですね。「わたしを包んでるこのフカフカしたものはなに?」と一生懸命情報を脳に送って、環境について知ろうとしているのです。

 

また、「手で触れると揺れる」「握って振ると音が出る」など、物事のつながり(因果)を感じられるようになってくると、今度は「手」と「眼」の協応がはじまり、興味のあるものに手を伸ばすなど、だんだん能動的な態度が見られるようになってきます。

6~12ヶ月

手指の機能が高まり「握る」から、「つまむ」ができるように。

 

以前保育士をしていた0歳児クラスでの出来事ですが、引き出しの下の段に貼られていた名札シールが全て剥がれていたことがありました。

 

「ン?あたらしいおともだちが来るから場所替えするのかな?」と思ったのですが、じつはあかちゃん(もうすぐ1歳でしたが)が剥がしたことが判明。これにはさすがにベテランの保育士さんも眼を丸めていましたね。


6ヶ月を過ぎると自分で座れるようになるので、両手が使えます。片手で身体を支え、もう片方で車のおもちゃを床の上で転がしたりするようになります。


この時期、机の上の物を落としたり、保育士が積んだ積み木を崩したり、というのも喜んでしたがります。これは原因・結果の因果関係が、分かるまではいかないけれどなんだか興味を引く、といった状態です。無限ティッシュボックスも飽きずに「引く」「出る」を繰り返します。


8ヶ月頃には間主観性が芽生え、大人と「やりもらい遊び」ができるようになります。お手玉などで「はいどうぞ」「ありがとう」を繰り返してみてください。

1歳~1歳6ヶ月

1歳になると引っ張る、出し入れ、叩く、振る、貼るなどができるようになります。「え?剥がすのは0歳でできるのに?」と思われた方も多いと思いますが、実は「剥がす」より「貼る」のほうがこどもにとっては難しいんです。シールを置く、シールを押す、くっつかないように手を引く、ですからね。3つもやることがあるわけです。


また、クラスで歩き出す子が多くなってくると、アヒルの親子の引きおもちゃが人気でした。喧嘩になるのであまり棚から出さなかったような(笑)。立てるけどあまり歩きたがらない子には、歩く意欲を湧かせるのに有効だったように思います。


あと、表に「デュシマピラミッド」とありますが、これは引っ張ったり開いたり回したりと、この時期の遊びがアソートされた「保育園・幼稚園向け」のおもちゃです。一般的な呼び名が分からなかったので代名詞的に使いました。同じようなおもちゃが日本のおもちゃメーカーからも「やみつきボックス」や「よくばりボックス」といった名前で販売されていますよ。

1歳6ヶ月~2歳

この時期のもっとも大きな特徴は「道具」を使えるようになるということでしょう。これに対応したおもちゃとしては「ノックアウトボール」とか「ハンマートイ」と呼ばれるものが有名です。前者については「森のオトピア」、後者についてはIKEAでも比較的手に入れやすい価格で売られています。


また、目的を持って遊ぶようになる(並べる、重ねる、揃える、通す)のもこの頃。そばで見ていたら「あ、揃えたいんだな」とか「通して繋げたいんだな」などすぐに気付くと思います。やり終わるまで声はかけないように(先輩保育士によく注意されました)。

2歳~3歳

さあ、イヤイヤ期です(笑)

この時期はできることが一気に増え、着替えやトイレなど身の回りのことを「自分で!」と言い張る場面も多くなります(お母さんは大変です)。

 

知力も向上、自我が育ち、自分で思ったことを成し遂げたいという気持ちが強くなります。

 

とはいえ、言葉も動作もまだまだ未完成。言いたいことがうまく言葉にできない、やりたいことが上手くできないなど、「したいこと」と「できること」のギャップに気持ちが不安定になることも多いです。 

 

なので、たとえばレールの上を想定通りに走るプラレールやトミカのコースのようなおもちゃが不安な気持ちを落ち着かせますし(コースはお母さんが作ってあげてください)、こどもの中のジレンマを解消できるような遊びを提供してあげるのが、「自信」や「有能感」に繋がって良いと思います。

 

また、1歳で芽吹いた象徴機能も伸びてきて、「見立て遊び」や「ごっこ遊び」を楽しめるようになりますので、エプロンやスカーフ、ままごとセットなどがあると良いでしょう。

大切なのはお母さんの優しいまなざし

知育玩具は高価な物が多いですが、身近にあるものを工夫して使うのもこどもの発想力を刺激して良いです。目の前で作ってあげるともの凄く興味を持って見てくれますし、あれこれ考えながら作ったりするのも楽しいですよ。今回は長くなってしまったので、また回をあらためて手作りおもちゃの作り方なんかもアップしていきたいと思います。

 

また、どうしても代用や手作りできないようなものは、海外製の高い物でなくても似たような商品が比較的安価でアマゾンやイケアでも手に入りますし、しっかり消毒して使えばメルカリなどで入手したものでも良いと思います。

 

おもちゃの値段が愛情ではありません。与えるだけでなく、良く観察して良く応えてあげることが、一番子どもの発達に必要なものだと僕は思っています。


今回の参考文献:

汐見 稔幸他 「はじめて出会う 育児の百科」小学館

瀧 薫「新版 保育とおもちゃ」 エイデル研究所