乳幼児とスキンシップ
スキンシップはお母さんとあかちゃんになくてはならないコミュニケーションです。
では具体的にどのように重要なのでしょうか。
お母さんへの愛情と安心感
スキンシップはお母さんとこどもとの情動的なコミュニケーションです。こどもは母さんの肌の温かさや匂い、触られたときの気持ち良さから、安心感や望まれてこの世に生まれた喜びを感じることができます。また、お母さんはあかちゃんの柔らかく小さな身体に触れることで、母性を刺激されます。
ハーローという心理学者の実験では、アカゲザルの赤ちゃんに恐怖を感じさせたところ、哺乳びんをつけた針金の代理母(人形)ではなく毛布で巻いた代理母にしがみつきました。このことから、アカゲザルは生理的欲求ではなく、接触感覚で母親を認識していると考えられています。
「自我」の育ちを支える
一般的に「自我」が芽生えるのは2歳頃からとされていますが、それ以前から自分という存在に気付き始めます。
生まれたばかりの赤ちゃんは自分というものの存在を認識していません。
それが、自分で自分に触ったりお母さんに身体をさすってもらったりすることで、肌が自分とまわりの世界の境界であることに気づきはじめます。何度もスキンシップをくりかえし、でお母さんに触れたり触られたりすることで、よりしっかりと自分を認識できるようになります。
やがて手足の運動神経も発達し、自分から周りの世界に働きかけることができるようになるとより「自分」と「世界」が明確に区別できるようになり、いよいよ主体的な自分として「自我」が芽生え始めるわけです。
ですので、お母さんとの優しいスキンシップは子どもに、愛されている自分と、暖かく包んでくれる外の世界をイメージさせ、その後の「自我」の成長にとても重要なのです。
幸せホルモン「オキシトシン」
スキンシップをとると多く分泌されると言われる「オキシトシン」。
「愛情ホルモン」や「きづなホルモン」などと呼ばれ、人との感情的絆を強める作用が有名で、じつは上に書いた「愛情」と「信頼感」もオキシトシンの作用によるところが大きいことも分かっています。
加えて、「ストレスの解消」「成長の促進」「多動や不注意の減少」「向社会性の向上」など、発達過程で問題となる多くのことに有効であるといわれているため、ベビーマッサージやタッチケアやカンガルーケアなど乳幼児期の保育やサポートにも多く取り入れられています。
スキンシップってどうすればよいの?
「こちょこちょ遊び」や「おんぶ」「抱っこ」「添い寝」などが代表的なスキンシップですが、その他にも身体を使った遊びや体操でもOKなようです。
これについては、静岡県掛川市が桜美林大学の山口創先生と共働して進められている「掛川流子育て応援事業「スキンシップのすゝめ」」にあるリーフレットに詳しく載っていましたのでリンクを張っておきます。
尚、山口先生は親子の触れ合いの効果や子どもの成長におよぼす影響を科学的に探究されていて、その著書もとても読みやすく、かつ説得力のあるものばかりです。
最後に
その他、ベビーマッサージも愛着関係の観点からも良いとされています。
スキンシップは、こどもだけでなく大人にとっても親密な関係を結ぶ上でなくてはならないコミュニケーションの一つです。小さいうちからその心地よさを知り、円滑な人間関係を築けるおおらかな大人に育って欲しいものです。
おすすめ参考文献:
山口創「こどもの「脳」は肌にある」光文社新書