おとうさんの育児って?
最近は子育てに積極的なお父さんも増えてきました。
実際、ある園の園長さん曰く、保護者からの相談で結構多いのが、父親としてこどもとどう関われば良いのかわからない、どう接すればよいのか教えて欲しい、というものだそうです。
そもそも父性は自然に芽生えない
お母さんは妊娠すると体調や精神状態の変化もあり、出産までに自然と母性がめばえてくるのが一般的です。
しかしお父さんとなると、奥さんの様子や周りの対応から、「なんとなく」じぶんが父親になるのだなあ、と感じるくらい。胎動も感じなければホルモンバランスの変化も皆無なので、ある意味仕方ありません。
では、どのように父性がめばえるのかといえば、斉藤耕二先生が「父親の辞典」で
男性は自分の個人的経験を通して父親役割を自覚し自分なりの仕方で父親役割をはたしていくことによって父親になっていく
と述べられているように、赤ちゃんを抱っこすることにはじまり、「こどもと触れあう」ことを繰り返す中で、「父子相互作用」的に膨らんでいくものなのです。
実際にどうやって「触れあう」?
これについては一般的には、お風呂に入れる、哺乳瓶で授乳する、あやす、オムツを換えるなど、お母さんが普段やっている育児に参加することだと言われています。
あかちゃんと日々少しでもコミュニケーションを取る中で、次第にこどもからの微笑みや喃語、「いってらっしゃい」や「ただいま」などのフィードバックが増えることによって、だんだんとお父さんの父性も育っていきます。
そう考えると、子育て=父育て、なのかもしれませんね。
お母さんとの違い
しかし、いつもお母さんのやることをマネするだけがお父さんの役割ではありません。
特にこどもとの「遊び方」には大きな違いが見られます。たかが「遊び」と侮るなかれ。こどもの発達は全て遊びの中にあるのです。
1977年とちょっと古いですが、月例12、13ヶ月児を対象にした遊びの相互作用についての研究によると、多くの場合、お母さんと遊ぶときは「いないいない、ばあ」や伝統的な遊びが多い一方で、お父さんとは身体的な遊びや、こどもが喜ぶ独自な遊び方をすることが多いそうです。
これは親和性の違いを表していて、お母さんが「愛着(アタッチメント)」の対象であるのに対し、おとうさんは一番近い「ともだち」のようなものなんだそう。
ちょっとガッカリしましたか?
でもこれは、ルールや創造的思考など社会性を身につける第一歩を、お父さんとの遊びを通して育む、ということです。もちろん、そのベースに確固たる父性があってこそです。
お母さんのサポート
これを忘れてはいけません。赤ちゃんを1次的支えるのがお母さんなら、お母さんを支えるのはお父さんです。
疲れ切ったお母さんでは、こどもは適切なコミュニケーションがとれず、絶えず不安や哀しみの中で過ごすことになり、愛着関係も危うくなりかねません。これがこどもの情緒に良くないことは言わずもがなです。
そんなとき、お母さんを元気にして上げられるのはお父さんだけ。家に居るときは積極的にこどもと関わり、一緒に子育てをしているという連帯感で、おかあさんの疲れや不安を取り除いてあげて欲しいところです。
まとめ
お母さんとはちょっと違う、お父さんの役割。
若干物足りない気がしなくも無いですが、これがあるのと無いのとじゃ思春期以降の発達に影響するとの研究もあるくらい、深く重要な営みなのです。
最近では保育園や子育て支援センターなどで、父親向けの子育て支援が見受けられるようになってきていますので、そういうところに参加してみると、モチベーションも上がって良いかも知れませんよ。
今回の参考文献:
櫻井茂男他「たのしく学べる 乳幼児の心理(改訂版)」福村出版