自閉症スペクタクルとは

3歳までのお母さんからよく質問を受ける「自閉症」。


確かに、この年齢のこどもは発達の早さに個人差が大きく、周りと違ったことをしていたりするとつい不安に思ってしまいます。

 

不安になる他の要素の一つに、ADHDやアスペルガーなど、関連する障害やキーワードが多過ぎて混同してしまいがちなのが1つ、そして、何が問題のある行動なのかの判断が(一般の保育者から見て)なかなか難しい、ということがあると思います。

そこで今回は、発達障害の全体像を知り、どのような特徴があるのかを整理しておきましょう。

 

何を「発達障害」って言うの?

発達障害には、「学習障害」「運動障害」「自閉症スペクトラム」という3つのカテゴリーがあります。

さらにその中の「自閉症スペクトラム」には「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」があります。
なので、一口に「自閉症」といっても、「自閉症」そのものを言う場合と、「アスペルガー症候群」などを含んだ「自閉症スペクトラム」を指す場合があることに注意してください。

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ごらんのとおり、各障害カテゴリは独立しているのではなく、互いに重なりあっています。

 

たとえば、自閉症スペクトラムの中でも学習面(知的障害)に問題がある(重なる)と自閉症、無い(重ならない)のが高機能自閉症とアスペルガー症候群、といった具合です。

 

その場合でも、ADHDや学習障害を併存している場合もあったりと、その子ひとり一人で態様は様々ですので、上記の表はなんとなくイメージする程度で参考にされれば十分だと思います。

 

実際には行動特徴から、それぞれについて適切な対応をしていくことになると思いますので、タイプ名はそこまで重要ではないのかもしれません。

 

以下は自閉症スペクトラムの3障害を、特性ごとに表にしたものです。これも一般的なタイプ分けなので、程度に差がでることは十分にあり得ます。

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自閉症スペクトラムの特徴的な兆候は?

一番大きな特徴は「人への関心の薄さ」です。
乳児期には、あやしても笑わない人と視線を合わせないなど「愛着行動の欠如」がみられます。その後も人の表情が読めなかったり気持ちに共感できず、ごっこ遊びもしません。


また「こだわりの強さ」から、いつもと違うことが起きたり、急な予定変更などの変化を受け入れにくく、時にはパニックを起こしてしまうこともあります。


その他にも、「常同行動」と呼ばれる、手を叩いたり身体を揺すったりする動きが見られたり、クレーン現象と呼ばれる、欲しいものを指さすのでは無く人の手をつかんで動かす行動が見られる場合もあります。


また、美術や音楽、算数などにすぐれた能力を発揮することがあります。ただし、たとえば数字の計算や漢字の覚えが早いなどの特徴が見られても、知能テストが高いとは限らず、能力を生活に生かせないケースも多いのが現状です。

原因は?

脳の問題が有力視されていますが、未だ原因は特定できていません。生まれつきの生得的な障害で、母親とのアタッチメントやしつけとは関係ない、といわれています。

本当に支援が必要なら、早めの対応が◎

自閉症スペクトラムの子は先に触れたように人との関わりがあまり得意では無いため、自分の意思表示をうまくできません。なので周りの理解が無いまま年齢をかさねることで、結果として2次的な障害が出ることも考えられます。


早めに支援を受け、適切な環境で活動できるようになれば、自己肯定感も増し、社会への順応性も高めることができます。

 

但しここ数年、安易に自閉症スペクトラムの診断を出しているケースも増えているそうです。できれば複数の先生に診ていただき、本当に支援が必要なのかを見定めたほうが良いでしょう。

 

早期発見のポイント

よく観察される行動をまとめてみました。もしこれをチェックしていて気になった方は、小児神経科や発達外来を受診されるとよいでしょう。

・微笑み返しがない
・目が合わない
・他の子や大人に興味が無い
・指差しをしない
・呼ばれても反応しない
・発語がおそい
・親の反応を確かめない
・ごっこ遊びをしない

社会自立を目指して

自閉症スペクトラムは、適切な支援があれば、社会自立も可能な場合もありますし、なによりもこどもに豊かな生活を与えられるようになります。まわりの大人が、正しい知識と理解を持って接することがその第一歩です。偏見や思い込みで対処することだけはお互いに絶対に避けたいものです。

尚、今回記事を書くにあたり参考にさせて頂いたCRN所長で、お茶の水大学名誉教授の榊原洋一先生の書かれた「最新図解 自閉症スペクトラムの子どもたちをサポートする本」が、とても詳しいのに文章も読みやすく、理解しやすい内容でした。自閉症スペクトラムについて詳しく知りたい方にはオススメの本だと思います。

 

今回の参考文献:
・「何か変だよ、日本の発達障害の医療 【後編】過剰診断・治療」 CHILD RESEARCH NET 2018年4月13日掲載
https://www.blog.crn.or.jp/chief2/01/47.html

・自閉症判断基準として用いられているM-CHATについての参考資料―「自閉症スペクトラム障害の早期発見のポイント」
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部
https://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/research/elearning2.pdf