愛着(アタッチメント)って何?
乳幼児期の子育てでなにが一番大切なのかと問われれば、保育士10人中12人が「愛着(アタッチメント)」と答えると思います。
それくらい重要な愛着関係ですが、どのようにして育めば良いのでしょうか?
実際はほとんどのお母さん(養育者)が日々の子育ての中で子どもとの間に普通に育んでいるものですので、特段何かしなければいけないわけでもありませんが、「ああ、あれって愛着につながっているんだ」と思って頂ければ子育てに自信が持てますし、それで充分な内容だと思いますので、気楽に読んでみてください。
そもそも愛着(アタッチメント)って何?
「人が特定の対象に抱く、信頼感や情緒的な絆」のことです。
平たく言うと、愛情に溢れた親子的な繋がり、ということになります。
親子(的)としたのは、現在では親でなくても愛着関係を築くことができることが分かってきたからです。
いつ頃から注目され始めたの?
終戦後のイタリア。施設に入所した多くの乳幼児に、歩行などの運動能力や言語・知能の遅れ、無感動な性格に高死亡率といった問題(施設病:ホスピタリズム)が発生します。
そこでWHOから調査依頼されたのがイギリスの心理学者ボウルビィでした。彼がその調査の中で施設病の原因が施設そのものではなく、「母性剥奪」にあることを発見し、これが後に愛着理論に繋がってゆきます。
その後アメリカの心理学者エインズワースなど多くの研究者が愛着について研究を進め、今ではどんな発達心理学の教科書にも必ず記載される程、その重要性について広く認識されています。
なぜ重要なの?
このように愛着理論が広く世間に知られるようになると、いろんな事の基礎に愛着が不可欠であることが分かってきました。
< 人間関係 >
赤ちゃんは、実は出生直後から様々なサインで愛着的なコミュニケーションを取ろうとしています。これに適切に応えてあげることで、次第に愛情と信頼が生まれます。
そして生後7ヶ月までには、2人だけにしか分からない、非言語的な「コミュニケーション・ルーティン」ができあがります(これが通じないことへの不安から「人見知り」になります)。このやりとりが土台となって、言葉が話せるようになると、今度は他の人ともコミュニケーションを取ることができるようになっていくのです。
< 自我の形成 >
また、外の環境へ関わっていくときにも、はじめは怖いものの、いざというときはお母さんが守ってくれるという安心感から、勇気を持っていろんなことに挑戦しようとするわけです(安全地帯、なんて呼び方もします)。
探索行動から自分と、自分をとりまく環境について認識したり、他人と触れあったりすることで、こどもの自我が育っていきます。これができないと「有能感」や「自己肯定感」の欠如に繋がってしまいます。
< こどもの「気質」>
さらにいうと、あかちゃんの「気質」にも大きな影響を与えます。
赤ちゃんは生まれながらにそれぞれの「気質」を持って生まれますが、たとえばその子がいわゆる「育てにくい子」であったとしても、愛着関係によって適切な方向へ導くことが出来ると言われています。
< 心の理論 >
「心の理論」の獲得との関係も指摘されています。
「心の理論」とは、簡単に言うと相手の立場や視点に立って考察する力のことです。
愛着関係が不安定なこどもでは「心の理論」の理解度をテストする「誤信念課題」の正解率が低いと言う実験結果が出ています。詳しい原因は未だ不明なのですが、愛着関係を築く中でお母さんがこどもを「心を持った存在」として対応することが、結果としてこどもが自他の心の存在を意識することに繋がっているのではないか、と考えられています。
その他にも、孤立した小屋に放置され心身の発達が著しく遅れた幼児が、施設に保護された後しばらくは回復が見られなかったものの、その後一人の保育士と愛着関係を気付くことにより、めざましい発達を遂げ、ほぼ心身ともに平均的な能力を獲得できた、という事例があるように、愛着は発達に必要不可欠な、唯一無二の「栄養」のようなものなのです。
どうすれば「愛着関係」を築けるの?
じつは赤ちゃんは、生まれたときから愛着行動をはじめています。

生まれてすぐの赤ちゃんが泣いたり、微笑んだり、人をジッと見つめたりするのは、不特定多数に向けた愛着関係募集のシグナルです。視線や微笑みを返したり、「お腹空いたねえ」「眠たいの?」「うれしいね」など、あかちゃんの気持ちを汲みとるような声をかけたり、抱っこしてあやしたりすることが、愛着関係の最初の一歩となります。
特にお腹の中に居た頃から既にお母さんの声効いていますので、聴き慣れた優しい声で自分の気持ちを汲み取ってもらうことで、信頼感と安心感が育っていきます。
お風呂入れや授乳のときに身体が触れあうことも、重要な愛着行動です。
「乳幼児とスキンシップ」でも触れましたが、赤ちゃんとの肌の接触は母子ともに「愛情のホルモン」といわれる「オキシトシン」の分泌を促進し、信頼感や安心感を育むことが最近の研究で分かっています。
さらに6ヶ月を過ぎると、声を上げたり、指差しをしたりと、いろいろな方法でシグナルを送ってきます。
これに敏感に感じ取り、声で返したり、モノを取ってあげたり、抱っこしたりと適切に応答して上げることで、言葉はまだなくても親密なコミュニケーションが取れるようになっていきます。この時期お母さんとする「いないいない、ばあ」や「くすぐり遊び」などは、愛着の形成に非常に有効だと言われています。
また、特に大人が遊んで上げなくても、こどもが何かに夢中になっていることが有ると思います。そんなときはにそばで見守ってあげるだけでも、こどもは安心感を持って活動できます。途中こどもが視線を投げかけられたら、「じょうずにできたね」「ひとりでできてえらいね」と声をかけてあげてください。
まとめ
愛着無しにこどもは育ちません。
ですが、上に書いたように、愛情を持って子どもと関わっていれば、あかちゃんはちゃんとそれを受け取って、養育者に愛着をもってくれます。あまり過敏になりすぎずに、シグナルが読み取れたときには、適切に返してあげよう、くらいのメンタルで良いのではないかと思います。もちろん、スマホに気を取られてて見逃すとかはナシです。
おすすめ参考文献:
遠藤利彦他「乳幼児のこころー子育ち・子育ての発達心理学」有斐閣アルマ
内田伸子編「よくわかる乳幼児心理学」ミネルヴァ書房
廣島大三「6歳までのアタッチメント育児ーこどもを伸ばす愛情の表し方・与え方8つのメソッド」合同出版
山口創「こどもの「脳」は肌にある」光文社新書
乳幼児とスキンシップ
スキンシップはお母さんとあかちゃんになくてはならないコミュニケーションです。
では具体的にどのように重要なのでしょうか。
お母さんへの愛情と安心感
スキンシップはお母さんとこどもとの情動的なコミュニケーションです。こどもは母さんの肌の温かさや匂い、触られたときの気持ち良さから、安心感や望まれてこの世に生まれた喜びを感じることができます。また、お母さんはあかちゃんの柔らかく小さな身体に触れることで、母性を刺激されます。
ハーローという心理学者の実験では、アカゲザルの赤ちゃんに恐怖を感じさせたところ、哺乳びんをつけた針金の代理母(人形)ではなく毛布で巻いた代理母にしがみつきました。このことから、アカゲザルは生理的欲求ではなく、接触感覚で母親を認識していると考えられています。
「自我」の育ちを支える
一般的に「自我」が芽生えるのは2歳頃からとされていますが、それ以前から自分という存在に気付き始めます。
生まれたばかりの赤ちゃんは自分というものの存在を認識していません。
それが、自分で自分に触ったりお母さんに身体をさすってもらったりすることで、肌が自分とまわりの世界の境界であることに気づきはじめます。何度もスキンシップをくりかえし、でお母さんに触れたり触られたりすることで、よりしっかりと自分を認識できるようになります。
やがて手足の運動神経も発達し、自分から周りの世界に働きかけることができるようになるとより「自分」と「世界」が明確に区別できるようになり、いよいよ主体的な自分として「自我」が芽生え始めるわけです。
ですので、お母さんとの優しいスキンシップは子どもに、愛されている自分と、暖かく包んでくれる外の世界をイメージさせ、その後の「自我」の成長にとても重要なのです。
幸せホルモン「オキシトシン」
スキンシップをとると多く分泌されると言われる「オキシトシン」。
「愛情ホルモン」や「きづなホルモン」などと呼ばれ、人との感情的絆を強める作用が有名で、じつは上に書いた「愛情」と「信頼感」もオキシトシンの作用によるところが大きいことも分かっています。
加えて、「ストレスの解消」「成長の促進」「多動や不注意の減少」「向社会性の向上」など、発達過程で問題となる多くのことに有効であるといわれているため、ベビーマッサージやタッチケアやカンガルーケアなど乳幼児期の保育やサポートにも多く取り入れられています。
スキンシップってどうすればよいの?
「こちょこちょ遊び」や「おんぶ」「抱っこ」「添い寝」などが代表的なスキンシップですが、その他にも身体を使った遊びや体操でもOKなようです。
これについては、静岡県掛川市が桜美林大学の山口創先生と共働して進められている「掛川流子育て応援事業「スキンシップのすゝめ」」にあるリーフレットに詳しく載っていましたのでリンクを張っておきます。
尚、山口先生は親子の触れ合いの効果や子どもの成長におよぼす影響を科学的に探究されていて、その著書もとても読みやすく、かつ説得力のあるものばかりです。
最後に
その他、ベビーマッサージも愛着関係の観点からも良いとされています。
スキンシップは、こどもだけでなく大人にとっても親密な関係を結ぶ上でなくてはならないコミュニケーションの一つです。小さいうちからその心地よさを知り、円滑な人間関係を築けるおおらかな大人に育って欲しいものです。
おすすめ参考文献:
山口創「こどもの「脳」は肌にある」光文社新書
秋・冬にかかりやすい感染症(乳幼児)
秋口から春先までに流行する感染症をまとめてみました。
この時期は比較的重症化する感染症が多いので、夏に引き続き注意が必要です。
保育園では、一旦流行すると、その対応にてんやわんや…、なんてこともありますので、事前に予防法や発症後の対策について確認しておくと良いでしょう。
RSウイルス感染症
<どんな病気?>
RSウイルスの感染による呼吸器感染症。非常に感染力が強い。
一度感染しただけでは免疫はつかず、生涯にわたって何度もかかる病気です。
<年齢>
年齢問わず
乳幼児の場合は重症化しやすい
<症状>
発熱、鼻水、呼吸が苦しくなる。
25-40%の乳幼児で細気管支炎や肺炎の徴候があらわれます。
近年、乳幼児の突然死の原因の一部であることが明らかになっています。
<感染経路>
飛沫感染と接触感染。手指やオモチャなどの物品を介して感染します。
<予防法>
ワクチンはありません。
手洗いやマスク、オモチャの消毒などが有効ですが、予防自体が難しい病気です。
保育園で流行の兆しが見えた場合、1歳児以下は隔離することが望ましいでしょう。
<治療法>
対処療法になります。
1~2週間で徐々に回復しますが、重症例では、呼吸困難などのために入院することも。
<登園判断>
保育所における感染症対策ガイドラインによれば「呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」とありますが、かかりつけのお医者さんの診断に従うようにしてください。
インフルエンザ
<どんな病気?>
インフルエンザウイルスにる感染症。
学校保健安全法で第二種に指定されています。
<かかる年齢>
年齢問わずかかります。
<症状>
急に高熱が出て、3~4日続きます。
だるさ、食欲不振、関節痛、筋肉痛、喉の痛み、鼻汁、咳等の気道症状が表れます。
気管支炎、肺炎、中耳炎、熱性けいれん、急性脳症等の合併症が起こることが あるため、注意が必要です。
<感染経路>
飛沫感染、接触感染及び空気感染(飛沫核感染)
<予防法>
インフルエンザワクチン(※絶対に罹患しないわけではありません)。
保育園で流行の兆しが見えた場合、感染の疑いがある職員やこどもは速やかに隔離し、マスク着用と手洗いを徹底のうえ、ドアノブなどの環境表面を消毒用エタノール等で消毒することが望ましいでしょう。
<治療法>
抗インフルエンザ薬があります。
<登園判断>
「発症した後5日経過し、かつ解熱した後3日経過していること(乳幼児の場合)」とされていますが、感染拡大防止の為にも自分で判断せず、かかりつけのお医者さんの指示に従うようにしましょう。
マイコプラズマ肺炎
<どんな病気?>
マイコプラズマ細菌の感染によるおこる病気です。
重傷化すると「肺炎」になります。
<かかる年齢>
幼児期、学童期、青年期が中心とされています。
<症状>
咳、発熱、頭痛など、かぜとよく似た症状です。
熱が夕方から上がり朝方に下がるのが特徴で、咳もだんだん強くなってきます。
日中は比較的元気なため、見過ごされてしまうこともあります。
<感染経路>
飛沫感染及び接触感染です。食べ物を介して経口感染することもあります。
<予防法>
ワクチンはありません。
<治療法>
奥の場合に抗菌薬、あるいは自然経過による治療です。
<登園判断>
「発熱や激しい咳が治まっていること」
溶連菌
<どんな病気?>
A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)によって起こる感染症で、急性の咽頭炎です。
<かかる年齢>
学童期の小児に最も多く、3歳以下や成人も感染しますが、典型的な症状が現れることは少ないといわれています。
<症状>
38度以上の発熱と全身倦怠感、のどの痛みによって発症します。
全身に発疹が出たり、舌にイチゴのようなブツブツが現れるのも特徴です。
<感染経路>
飛沫感染及び接触感染です。食べ物を介して経口感染することもあります。
<予防法>
ワクチンはありません。
手洗い・うがいの励行を心がけましょう。
抵抗性が弱い細菌なので、市販の消毒液の使用も有効です。
<治療法>
抗菌薬によって治療します。
尚、処方された薬の服用を途中でやめてしまうと、再発したり、場合におっては急性腎炎・リウマチ熱・血管性紫斑病・中耳炎・気管支炎などの合併症を起こすこともあるそうですので、処方された期間は薬を服用するようにしましょう。
<登園判断>
「抗菌薬の内服 後 24~48 時間が経過していること」となっていますので、少なくとも、受診した日とその翌日はお休みしましょう。
ノロウイルス
<どんな病気?>
急性胃腸炎を引き起こす、ウイルス性の感染症です。
アルコールや熱に対する抵抗力があり、感染力が非常に強いと言われています。
<かかる年齢>
乳幼児から高齢者まで
<症状>
主な症状は吐き気、嘔吐、下痢ですが、その他にも腹痛 頭痛 発熱 悪寒 筋痛 咽頭痛 倦怠感を引き起こすこともあります。
<感染経路>
経口感染、飛沫感染及び接触感染です。
汚物処理が不十分な場合、乾燥・飛散して空気感染(飛沫核感染)します。
<予防法>
現在使用可能なワクチンはありません。
流行期には、前日に嘔吐していた子どもの登園は控えてもらうように保護者に伝えましょう。
また、トイレなどの次亜塩素酸ナトリウム(0.02%)による消毒も有効です。
<治療法>
治療法はなく、下痢や腹痛、脱水に対して水分補給等を行います。
<登園判断>
「嘔吐、下痢等の症状が治ま り、普段の食事がとれること」となっておりますが、ウイルスは便から3週間以上排出されることがあるので、排便後やおむつ交換後の手洗いを徹底して下さい。
まとめ
乳幼児期の感染症は重症化するものもあるので、より一層の注意が必要です。
マスクや手洗いはもちろん、タオルの共用はできるだけ避けるなど生活面にも配慮しましょう。最近ではインフルエンザやノロウイルスにも効果のある抗菌スプレーも出始めていますので、利用してみるのも良いと思います。
離乳食はいつから?
お母さんにとって、育児の最初の難関は「離乳食」ではないでしょうか。
実際に保育園にくるお母さんからの質問も多いのが離乳食についてです。
その中でもダントツで多いのが「いつから?」。
「マンマ」が言えたら離乳食
離乳食のスタート時期を見極めるのはちょっと難易度が高いですね。
概ね生後5~6ヶ月で離乳食を始めると言われていますが、こどもによって発達はまちまちなので、カレンダー通りに「はい、今日から離乳食!」という訳にもいきません。
一般的に良く聞くのが、お父さんお母さんが食べているのをじっと見ていたり、ヨダレの量が多くなってきたら大人の食べ物に興味が湧いているので離乳食をはじめてみる、というものですが、子育てが初めてのお母さんだと判断に迷ってしまうのではないでしょうか。
そこで分かりやすいのが、こどもの発語から推測する方法。食べるのも話すのも同じ「口」ですので、両者に密接な関係があるのは想像しやすいです。具体的には以下の通り。最初なので「Step.1」ですね。
<<食べ方と発語の3ステップ>>
実際にあげてみて判断
とはいえ、口の発達だけで食欲が湧くわけでもありません。
実際に上記Step1をやってみて判断します。
尚、離乳食を始めるときに、母乳やミルクの量を減らしたり増やしたり濃くしたりする必要はありません。このころはまだ一回にスプーン1杯程度なので栄養価やカロリーは気にしなくても大丈夫です。
まずは「十倍がゆ」からはじめて、慣れてきたら消化しやすい野菜(かぼちゃ、にんじん、ほうれん草など)をすりつぶしたものをあげてください。離乳食をはじめて1ヶ月が過ぎたら白身魚をすりつぶして混ぜます。固さでよくいわれるのは「プレーンヨーグルト(多分ブル○リアのこと?)」と同じくらいです。
ちなみに調味料は基本的に使いませんが、問題なく食べてくれますよ。
口を固く閉じたり、吐き出すようならすぐに撤収し、後日あらためて挑戦しましょう。
離乳食に迷ったら、近所の保育園に聞いてみよう!
気分転換もかねて、保育園まで散歩してみましょう。0歳児クラスの先生はベテランの方が多いので相談しやすいですし、時間が合えば栄養士さんからのアドバイスも貰えますよ。
事前に電話するのがベストですが、覗いてみるだけでもOK。きっと声をかけて貰えると思いますので、気軽に相談してみてください。
「食べて!」は逆効果
はじめての離乳食はけっこう嫌がるあかちゃんが多いです。初回に拒否されたからといって落ち込んだり悩んだりせず、まあミルク飲んでるから大丈夫か、程度のおおらかな気持ちで始めてみてください。
おすすめ参考文献:
中川 信子 著「ママが知らなかったおっぱいと離乳食の新常識〜かしこい育児はおくちからはじまる 〜」小学館
幼児の発音、いつまで?
発音は、吐いた息を唇や舌、口蓋などを動かして作られますが、この身体の部分のことを「構音器官」、それによって出された音を、この発音の仕組みに注目して「構音」とよんだりします。順調に上達することで、正しい発音ができるようになっていきます。
幼児のうちは発達途上
構音に何らかの問題があると、「できない」を「でちない」、「ライオン」を「ダイオン」と言ってしまいます。
でも大丈夫。幼児はまだ構音器官や神経・筋が発達途上ですので上手く話せなくて当然。お乳が飲めないとか、呼吸に難がある等のことがないのであれば、あまり小さいウチから心配する必要はありません。
下の表は発音と獲得年齢についてですが、だいたいの目安ですので、参考程度にご覧ください。
とはいえ、6歳までにはほぼ大人と同様の構音機能を身につけているそうので、もし小学校に上がる頃になってもまだ発音に問題がある場合には、ほんの少し構音障害を疑ってみてもよいかもしれません。
構音障害には4つの種類がある
構音障害はその要因によって4つに分類されています。
・運動性構音障害
発音に使う身体の部分を上手く動かせないことから生じる構音障害。要因としては、脳や神経、筋に何らかの異常がある可能性が考えられます。
・器質性構音障害
口蓋裂や舌小帯短縮症など、構音器官に形態異常や欠損があることで発音が不明瞭になる場合をいいます。
・機能性構音障害
特に器官や神経系や筋、あるいは聴力に問題が無いにもかかわらず構音障害が見られる場合にはこちらに該当することになります。
・聴覚性構音障害
聴覚の障害からくる発音障害です。
こう説明するとなんだか不安ですが、「方言」による発音の違いもこちらに分類されますし、単に正しい発音の仕方を身につけていないだけなことも多く、きちんとした訓練で直ることが多いのもこの障害の特徴です。
否定的な訂正はダメ!
心配ゆえ、こどもが魚のことを「たかな」と行った際に「さかなでしょ!さ・か・な」と強く否定的な矯正を強いる場面を見かけますが、言葉が出なくなるので止めましょう。「そうね、さかなね。」など、肯定的にヤンワリ意識することを促すのが正解です。
可愛いからと大人も真似をしたりするのも、自分から直そうとしなくなるのであまり良いとは言えません。
相談窓口は?
通っている園があればそちらに相談してみてください。医療機関や言語聴覚士がいる施設などを教えて貰えると思います。就学前検診などを利用して質問してみるのも良いかもしれませんね。
参考URL:こどもの構音障害 ( 石川県言語聴覚士会)※pdfが開きます(約1.5MB)
おもちゃについて(0歳・1歳・2歳)
子どもにとって、オモチャは「自分をとりまく世界に触れることの代替手段」です。
保育の仕事に携わるようになって、「危険なものや複雑なしくみを理解すること」と「発想すること」を、達成しやすいかたちでシンプルに提示してあげることがオモチャの本来の役割なのかな、と感じています。
でも、知育玩具をうたっている商品って高い物が多くて「・・・」ですよね。しかも、意外とこどもの食いつきが悪い(笑)。
そこで、オモチャ選びのポイントとして各発達段階でのこどもの育ちと、獲得して欲しい「ちから」を(知育玩具もこれに則ってつくられているはずです)、保育士時代の経験も交えてまとめてみました。
玩具が促す、3つの育ち
まず、0~3歳までの大まかなポイントを。
- 身体能力の発達
- 因果関係の理解
- 自我の育ち
1については、具体的に言うと筋・神経・脳の繋がりを促します。2は「触ると揺れる」「振ると音が鳴る」など、「じぶんがした働き掛け」と「世界の反応」について感じとり、理解するということです。3ですが、「自我」とは簡単に言うと「自分の思うように生きたい」という気持ちです。
それでは行ってみましょう。
0~6ヶ月
まだ随意運動が上手く出来ないごく初期には、おかあさんが「おもちゃ」です。
抱っこしたり、あやしたり、子守歌を歌ったりと、受動的に刺激を受けることによって感覚を覚えていきます。
モビールが揺れるのをみるのも楽しい頃です。しばらくして指が開くようになると、把握反射を利用して握ることができるようになります。これによって手触りや大きさ等様々な情報を刺激として感知し、脳に送ります。
赤ちゃんがよく毛布やシーツをニギニギしているのもこれですね。「わたしを包んでるこのフカフカしたものはなに?」と一生懸命情報を脳に送って、環境について知ろうとしているのです。
また、「手で触れると揺れる」「握って振ると音が出る」など、物事のつながり(因果)を感じられるようになってくると、今度は「手」と「眼」の協応がはじまり、興味のあるものに手を伸ばすなど、だんだん能動的な態度が見られるようになってきます。
6~12ヶ月
手指の機能が高まり「握る」から、「つまむ」ができるように。
以前保育士をしていた0歳児クラスでの出来事ですが、引き出しの下の段に貼られていた名札シールが全て剥がれていたことがありました。
「ン?あたらしいおともだちが来るから場所替えするのかな?」と思ったのですが、じつはあかちゃん(もうすぐ1歳でしたが)が剥がしたことが判明。これにはさすがにベテランの保育士さんも眼を丸めていましたね。
6ヶ月を過ぎると自分で座れるようになるので、両手が使えます。片手で身体を支え、もう片方で車のおもちゃを床の上で転がしたりするようになります。
この時期、机の上の物を落としたり、保育士が積んだ積み木を崩したり、というのも喜んでしたがります。これは原因・結果の因果関係が、分かるまではいかないけれどなんだか興味を引く、といった状態です。無限ティッシュボックスも飽きずに「引く」「出る」を繰り返します。
8ヶ月頃には間主観性が芽生え、大人と「やりもらい遊び」ができるようになります。お手玉などで「はいどうぞ」「ありがとう」を繰り返してみてください。
1歳~1歳6ヶ月
1歳になると引っ張る、出し入れ、叩く、振る、貼るなどができるようになります。「え?剥がすのは0歳でできるのに?」と思われた方も多いと思いますが、実は「剥がす」より「貼る」のほうがこどもにとっては難しいんです。シールを置く、シールを押す、くっつかないように手を引く、ですからね。3つもやることがあるわけです。
また、クラスで歩き出す子が多くなってくると、アヒルの親子の引きおもちゃが人気でした。喧嘩になるのであまり棚から出さなかったような(笑)。立てるけどあまり歩きたがらない子には、歩く意欲を湧かせるのに有効だったように思います。
あと、表に「デュシマピラミッド」とありますが、これは引っ張ったり開いたり回したりと、この時期の遊びがアソートされた「保育園・幼稚園向け」のおもちゃです。一般的な呼び名が分からなかったので代名詞的に使いました。同じようなおもちゃが日本のおもちゃメーカーからも「やみつきボックス」や「よくばりボックス」といった名前で販売されていますよ。
1歳6ヶ月~2歳
この時期のもっとも大きな特徴は「道具」を使えるようになるということでしょう。これに対応したおもちゃとしては「ノックアウトボール」とか「ハンマートイ」と呼ばれるものが有名です。前者については「森のオトピア」、後者についてはIKEAでも比較的手に入れやすい価格で売られています。
また、目的を持って遊ぶようになる(並べる、重ねる、揃える、通す)のもこの頃。そばで見ていたら「あ、揃えたいんだな」とか「通して繋げたいんだな」などすぐに気付くと思います。やり終わるまで声はかけないように(先輩保育士によく注意されました)。
2歳~3歳
さあ、イヤイヤ期です(笑)
この時期はできることが一気に増え、着替えやトイレなど身の回りのことを「自分で!」と言い張る場面も多くなります(お母さんは大変です)。
知力も向上、自我が育ち、自分で思ったことを成し遂げたいという気持ちが強くなります。
とはいえ、言葉も動作もまだまだ未完成。言いたいことがうまく言葉にできない、やりたいことが上手くできないなど、「したいこと」と「できること」のギャップに気持ちが不安定になることも多いです。
なので、たとえばレールの上を想定通りに走るプラレールやトミカのコースのようなおもちゃが不安な気持ちを落ち着かせますし(コースはお母さんが作ってあげてください)、こどもの中のジレンマを解消できるような遊びを提供してあげるのが、「自信」や「有能感」に繋がって良いと思います。
また、1歳で芽吹いた象徴機能も伸びてきて、「見立て遊び」や「ごっこ遊び」を楽しめるようになりますので、エプロンやスカーフ、ままごとセットなどがあると良いでしょう。
大切なのはお母さんの優しいまなざし
知育玩具は高価な物が多いですが、身近にあるものを工夫して使うのもこどもの発想力を刺激して良いです。目の前で作ってあげるともの凄く興味を持って見てくれますし、あれこれ考えながら作ったりするのも楽しいですよ。今回は長くなってしまったので、また回をあらためて手作りおもちゃの作り方なんかもアップしていきたいと思います。
また、どうしても代用や手作りできないようなものは、海外製の高い物でなくても似たような商品が比較的安価でアマゾンやイケアでも手に入りますし、しっかり消毒して使えばメルカリなどで入手したものでも良いと思います。
おもちゃの値段が愛情ではありません。与えるだけでなく、良く観察して良く応えてあげることが、一番子どもの発達に必要なものだと僕は思っています。
今回の参考文献:
汐見 稔幸他 「はじめて出会う 育児の百科」小学館
瀧 薫「新版 保育とおもちゃ」 エイデル研究所
ライナスの毛布
こどもが不安や恐れ、寂しさなどを感じた際に、タオルやぬいぐるみなど特定のモノに愛着をしめすことがあります。このモノのことを発達心理学では「移行対象」と呼んだりします。はやい子だと1歳ごろから現れます。
取り上げた方が良いの?
すぐに取り上げたりはしない方が良いでしょう。
移行対象はこどもが自分で感情を立て直そうとしている、いわば自律的な行動で、発達面でもポジティブなものなんです。むやみに取り上げたりすれば情緒が不安定になったり、不安が増してしまい良い結果には繋がりません。
悪い癖ではありません
欧米圏では60~90%のこどもが経験する現象とされています。「移行対象」という言葉の生みの親で小児科医のウィニコット自身も、移行対象について「こどもの健常な情緒的および認知的な発達に不可欠な役割を果たす」と考えていましたので、過剰に心配する必要はないと思います。通常は小学校に上がる前に消滅すると言われています。
日本人には少ない?
日本では30%程度と出現率は低いため、母親の育児に問題があるとされた時代もありました。しかし、ごく普通の環境下でもストレスの量やこどもの耐性によってはこのような行動が出てしまうこともあるようですので、これを一概に子育て方法に問題があるとするのは早計です。
ちょっと注意して観察してみる
とはいえ、なんらかのストレスを感じているのは確かです。発達過程での一般的なストレスであれば問題なさそうですが、もし何か心当たりがあるようなら、少しずつ環境や方法をかえてみると、こどもも安心して過ごせるのではないかと思います。通常は小学校に上がる前に消滅するのでちょっと注意して観察してみるのが良いかもですね。
今回の参考文献:
遠藤利彦ら 「乳幼児のこころ―子育ち・子育ての発達心理学」有斐閣アルマ
子安増生・二宮克美編「キーワードコレクション 発達心理学」新曜社
自閉症スペクタクルとは
3歳までのお母さんからよく質問を受ける「自閉症」。
確かに、この年齢のこどもは発達の早さに個人差が大きく、周りと違ったことをしていたりするとつい不安に思ってしまいます。
不安になる他の要素の一つに、ADHDやアスペルガーなど、関連する障害やキーワードが多過ぎて混同してしまいがちなのが1つ、そして、何が問題のある行動なのかの判断が(一般の保育者から見て)なかなか難しい、ということがあると思います。
そこで今回は、発達障害の全体像を知り、どのような特徴があるのかを整理しておきましょう。
何を「発達障害」って言うの?
発達障害には、「学習障害」「運動障害」「自閉症スペクトラム」という3つのカテゴリーがあります。
さらにその中の「自閉症スペクトラム」には「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」があります。
なので、一口に「自閉症」といっても、「自閉症」そのものを言う場合と、「アスペルガー症候群」などを含んだ「自閉症スペクトラム」を指す場合があることに注意してください。
ごらんのとおり、各障害カテゴリは独立しているのではなく、互いに重なりあっています。
たとえば、自閉症スペクトラムの中でも学習面(知的障害)に問題がある(重なる)と自閉症、無い(重ならない)のが高機能自閉症とアスペルガー症候群、といった具合です。
その場合でも、ADHDや学習障害を併存している場合もあったりと、その子ひとり一人で態様は様々ですので、上記の表はなんとなくイメージする程度で参考にされれば十分だと思います。
実際には行動特徴から、それぞれについて適切な対応をしていくことになると思いますので、タイプ名はそこまで重要ではないのかもしれません。
以下は自閉症スペクトラムの3障害を、特性ごとに表にしたものです。これも一般的なタイプ分けなので、程度に差がでることは十分にあり得ます。

自閉症スペクトラムの特徴的な兆候は?
一番大きな特徴は「人への関心の薄さ」です。
乳児期には、あやしても笑わない、人と視線を合わせないなど「愛着行動の欠如」がみられます。その後も人の表情が読めなかったり気持ちに共感できず、ごっこ遊びもしません。
また「こだわりの強さ」から、いつもと違うことが起きたり、急な予定変更などの変化を受け入れにくく、時にはパニックを起こしてしまうこともあります。
その他にも、「常同行動」と呼ばれる、手を叩いたり身体を揺すったりする動きが見られたり、クレーン現象と呼ばれる、欲しいものを指さすのでは無く人の手をつかんで動かす行動が見られる場合もあります。
また、美術や音楽、算数などにすぐれた能力を発揮することがあります。ただし、たとえば数字の計算や漢字の覚えが早いなどの特徴が見られても、知能テストが高いとは限らず、能力を生活に生かせないケースも多いのが現状です。
原因は?
脳の問題が有力視されていますが、未だ原因は特定できていません。生まれつきの生得的な障害で、母親とのアタッチメントやしつけとは関係ない、といわれています。
本当に支援が必要なら、早めの対応が◎
自閉症スペクトラムの子は先に触れたように人との関わりがあまり得意では無いため、自分の意思表示をうまくできません。なので周りの理解が無いまま年齢をかさねることで、結果として2次的な障害が出ることも考えられます。
早めに支援を受け、適切な環境で活動できるようになれば、自己肯定感も増し、社会への順応性も高めることができます。
但しここ数年、安易に自閉症スペクトラムの診断を出しているケースも増えているそうです。できれば複数の先生に診ていただき、本当に支援が必要なのかを見定めたほうが良いでしょう。
早期発見のポイント
よく観察される行動をまとめてみました。もしこれをチェックしていて気になった方は、小児神経科や発達外来を受診されるとよいでしょう。
・微笑み返しがない
・目が合わない
・他の子や大人に興味が無い
・指差しをしない
・呼ばれても反応しない
・発語がおそい
・親の反応を確かめない
・ごっこ遊びをしない
社会自立を目指して
自閉症スペクトラムは、適切な支援があれば、社会自立も可能な場合もありますし、なによりもこどもに豊かな生活を与えられるようになります。まわりの大人が、正しい知識と理解を持って接することがその第一歩です。偏見や思い込みで対処することだけはお互いに絶対に避けたいものです。
尚、今回記事を書くにあたり参考にさせて頂いたCRN所長で、お茶の水大学名誉教授の榊原洋一先生の書かれた「最新図解 自閉症スペクトラムの子どもたちをサポートする本」が、とても詳しいのに文章も読みやすく、理解しやすい内容でした。自閉症スペクトラムについて詳しく知りたい方にはオススメの本だと思います。
今回の参考文献:
・「何か変だよ、日本の発達障害の医療 【後編】過剰診断・治療」 CHILD RESEARCH NET 2018年4月13日掲載
https://www.blog.crn.or.jp/chief2/01/47.html
・自閉症判断基準として用いられているM-CHATについての参考資料―「自閉症スペクトラム障害の早期発見のポイント」
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部
https://www.ncnp.go.jp/nimh/jidou/research/elearning2.pdf