思いやりのある子に育てるには?

思いやりのある、優しい子に育って欲しい。

これは全てのお母さんがこどもに願うことだと想います。

でも、実際そのためにはどうすればよいのでしょう?

 

そもそも「思いやり」とは?

思いやりは、相手の心情や状況に心を配ること、もしくはそういった気持ちをいいます。それは、ただ「ああ、この人は悲しんでいるんだな」と頭で判断するのではなく、その人の痛みに寄り添い、なんとかしてあげたいと思う「こころ」、相手の気持ちに対する「共感」する心が必要です。

 いろんな感情を経験する

「共感」を育てるには「感情」を知り、それが相手の心の中にあることを理解できなければなりませんよね。

一般的に感情の発達については、だいたい6ヶ月くらいまでに喜怒哀楽の基本的な感情が揃い、その後客観的に自分を認知できるようになると(客体的自己)照れや憧れ、そして共感が生まれます。

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そして、これら「感情(情緒)」を、赤ちゃんは愛着関係にある大人からのフィードバックによって獲得していくと考えられています。

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赤ちゃんは様々な形で自分の思いを表現します。それをお母さんが読み取り、「こわかったね」「さびしかったね」「嬉しいね」と気持ちを共有し、言葉を添えて優しく投げ返します。

このようなごく一般的なやりとりの中で、自分の気持ちが理解されている、受容されていると感じると同時に、安心して自分の気持ちに気付きます。

色んな感情を体験させるだけでなく、お母さんの言葉がけや表情でその感情に気付かせてあげると、赤ちゃんの心はどんどん豊かになっていきます。

この点、絵本の読み聞かせはとても有効です。

いろんなお話をお母さんに読んでもらい、安心した環境でたくさん感情の機微を体験できます。

相手の身になって考える力

上の表を見て頂くと分かるように、0歳ですでに「苦痛」の感情を持っています。

 

たとえばこの頃の赤ちゃんは、転んで泣いている子がいると、それを見て泣いてしまうことがあります。

 

ホフマンという心理学者によると、このとき赤ちゃんは、相手と自分の区別がなく自分が痛み(不快)を感じたような気分になり、相手の痛みではなく自分の痛みとして泣いています。

 

これが、1歳を過ぎると、自分を客観的に見られるようになる反面、他人が別の存在だと気づきはじめ、相手のことを慰めるようなしぐさがみられるようになります。上記「感情の発達」でも「共感」はこの頃に獲得されていますね。

 

でもまだすこし自分の苦痛と他人の苦痛を混同しているところがあって、転んで泣いている子を「自分の」お母さんのところに連れて行ってしまいます。

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その後2際から3歳になると、他人の立場・視点から気持ちや考えをなんとなくですが推測できるようになって、泣いている子を「その子の」お母さんのところに連れて行けるようになります。

 

このように、状況から相手が自分に期待するであろうことが理解できるようになることを「役割取得能力」といいます。

 

共感する力はこの役割取得能力とともに発達していくわけですね。

他人の心は「やりもらい遊び」から

ではこの「役割取得能力」を伸ばすには?


初歩的なものは7~8ヶ月でできるようになる「やりもらい遊び」です。


愛着関係にあるお母さんとのやりとりの中で、自分がして欲しいこと、相手がしたいことが「はい、どうぞ」「まあ!ありがとう」を繰り返すことで同じだと分かり、相手の意図を察する力が育ちます。この時期はウンザリするくらい何度も繰り返したがりますが、頑張って付き合ってあげてください。


そして2歳からはじめる「ごっこ遊び」も、様々な役になりきって他の人の考え方や行動を学ぶことのできるものです。人形をあやしたり、ままごとやお店屋さんごっこなど、いろいろとシチュエーションを変えて遊ぶと良いとされています。

特別なことではない

思いやりのある子に育つには、色んな感情を育まれることと、相手の気持ちになって考えられることが必要です。

発達過程ということで面倒臭い学説を取り上げて説明しましたが、つまるところ養育者としては特別何かをする必要があるわけではなく、普段お母さんがしている愛情あるやりとりで育まれているるものなんですね。

とはいえ知ってやるのと知らずにやるのとは結果に違いが出ることも多いので、赤ちゃんと触れあうときに頭の片隅に思い出して頂ければ幸いです。

 

今回の参考文献:

遠藤利彦他「乳幼児のこころー子育ち・子育ての発達心理学ー」有斐閣アルマ

萩野美佐子「発達心理学特論」放送大学大学院教材

菅野幸恵他「エピソードで学ぶ あかちゃんの発達と子育て」新曜社

澤田瑞也 「人間関係の生涯発達 (人間関係の発達心理学) 」培風館